名盤の音源探求

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なぜ同一のアルバムで音が異なるのか

デジタル音源の普及

視聴レポートをスタートするにあたっていくつかの基本的な事項について触れておきたいと思います。まずは『なぜ異なる音源が複数存在するのか』についてです。このお話はデジタル音源が一般的に普及した1980年代前半の時代に遡ります。メジャーなアルバムのデジタルレコーディングが開始されたのは1980年頃です。そしてデジタル音源として初めて一般的に普及したメディアがCD(コンパクトディスク)であり、1982年にCDプレーヤーとともに数十タイトルのアルバムが発売されました。当時のデジタル録音や、CDは16bit、44.1KHzでサンプリングされたものでした。詳しいお話は割愛しますが、これは1秒の時間のアナログの音を44.1KHz=44,100個(左右それぞれ22,050個)に分割し、分割されたそれぞれの細かい音を16bit=65,536通りの諧調で数値化して、デジタルデータとしてCDのディスク上に記録し、CDプレーヤーで再生時にそのデジタルデータをレーザー光線で読み込み逆のプロセスでアナログに戻し、音を出力することとなります。当時はレコードが一般に普及している最高の音源として普及していたのですが、徐々にその主流がCDへと移り変わっていったのです。

 

マスター音源とマスタリングについて

生演奏の音楽をレコーディングする際に、そのままデジタル化して記録することをデジタルレコーディング、それに対して旧来からあるアナログテープを使って録音することをアナログレコーディングといいます。1980年代はデジタルレコーディングとアナログレコーディングが混在する時代でした。レコーディングのプロセスはもう少し複雑ですが、このレコーディングによって得られた元の音源のことをオリジナルマスター音源と呼び、最終的にオリジナルマスター音源を上記のCDフォーマットの中に最適な形で音圧調整、イコライジング、ノイズコントロールなどを行ってリスナーにとって最も「良い音」と感じてもらえる音質調整を行い、CD音源を最終決定する作業を「マスタリング」といいます。

マスタリングはマスタリングエンジニアによって行われますが、リスナーに届ける最終的な音質を決定する重要なプロセスであると同時に、マスタリングエンジニアの感性がその結果を左右する大きな要素となります。CD発売初期のマスタリングは機材の性能もマスタリングのノウハウも発展途上であったと思います。実際、レーベルやマスタリングエンジニアによって音質はかなりばらつきがあり、レコードからCDにすぐに移行をすることを控えた愛好家の方も多かったと思います。

 

ハイレゾの技術によって進化するマスタリング

1990年代中盤以降には16bitから24bit、44.1KHzから88.2KHz、96KHzとデジタル音源の規格はより解像度の高い音の再現が可能な規格へと進化します。すなわちこれがハイレゾ音源と言われるものです。ちょうど、ハイビジョンの映像が、4K、8Kへと進化するのと同様に、よりリアルに近い音が収録できるようになったのです。これを機に、過去にマスタリングされた音源は新たにハイレゾでデジタル化され、音の鮮度を高く維持した状態でリマスターされるようになります。CDの規格事態は変わらなくてもこのデジタルリマスター技術によってCDの音源からはより高いレベルの音を得ることができるようになりました。ただし、前述のとおり、デジタルリマスターを行っても、アナログのオリジナルマスター音源の経年劣化、マスタリングエンジニアのスキルなどによって、必ずしも新しいリマスター版がより良い音源となるとは限らないのです。

 

ハイレゾ音源そのものの流通

1999年に入るとハイレゾ音源そのものがメディアとして流通します。最も普及した規格がSACDです。SACDはCD音源の約7倍のデータでデジタル化された音源ですので、理論的にはCDを圧倒するよりリアルな(すなわちオリジナルマスターの音源に近い)音源を手にすることができます。ただし、こちらもハイレゾ音源の規格を十分に活かした、オリジナルマスター音源の選定、スキルの高いマスタリングなしでは、その効果を実感することができないのが現実です。従ってCDよりもSACDの方が音が良い、という単純な結果となるものではありません。

 

同一のアルバムでも音が異なる複数の音源の乱立

以上の背景から、名盤と称されるアルバムであればあるほど、初期のCDの音源、デジタルリマスタリングされた音源、ハイレゾ音源などが複数のレーベルからリリースされており、同一のアルバムでも様々な音源が流通するに至っています。当サイトでは各音源を視聴し、最良の音源を探求していこうと考えています。